瞼を開いて上を見やると、アルミ合金の天井板が鈍い反射光を放っており、大型船特有の振動とともに、安物シーツの薄っぺらでヒンヤリした感触が背中に伝わってくる。間違いない。自分家(ち)のベッドではないことを確信。 ―「寝ては夢」なら「起きたら(・・)現実」。ウン、始まったんだ! …
いよいよ世界一周の旅へ ?! 多くの歳月を経たであろう床板は泥で黒ずみ、くすんだ斑模様が浮き出ていた。ゆるやかなアーチ状に継がれた橋板をひたすら進み、たどり着いた先は視界を蓋うばかりのガラス壁。透明な扉が開閉するたびに人を呑んでは吐き出していた。 横浜港大桟橋は日本…
リュックを背負って世界一周クルーズの船上に立ったのは、ちょうど一年前のことだった。 105日間の世界一周の旅に出ると聞いて、周囲の人たちは目を輝かせ、私を羨ましがった。 海外旅行というだけなら何も事新しくはない。実のところ、周囲を驚かせたのは、10…
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